喫茶店 おもてなし

3

「ごめんなさい、少し遅くなっちゃったわ。」

ようやく家に帰り着いた彼女は［豪華過ぎる料理］をテーブルに並べる彼に向かってそう言った。

「大丈夫、気にしなくてもいいよ。［今日は特別な日］なんだからね。」

薄手のコートを預かり、彼女をテーブルまでエスコートする彼の姿は、女性ならば誰しもが憧れるであろうシチュエーション。

いつもの席へと案内され、今日の出来事を語り合いながら2人は料理を堪能した。

「それにしても、［今日は本当に豪華な料理］なのね。食べても食べても料理が減ってる気がしないもの。ねぇ、ロイド？貴方は私を太らせる気なの？」

「あぁ、そんなつもりはないんだ。ただ、君から妊娠したって聞いて・・・［あまりにも嬉しかったから］、さ。今日はいつもより張り切ってしまったんだよ。でも、リリスには［今から沢山、栄養をつけてもらわないといけない］ね？」

そして、彼は照れ臭そうに頬を紅潮させる。

「［そんなに喜んでもらえる］だなんて思ってもみなかったわ。あぁ、そうそう・・・ちなみに［お腹の子は双子］だそうよ？」

「へぇ～、そうなんだ。お腹の子も君達みたいな姉妹のように・・・仲良く育つといいな。」

「えぇ、本当にそうなるといいわね。」

彼女は自分のお腹にそっと手を当てると、まるで壊れ物を扱うかのように優しく撫でた。

それからしばらくは他愛のない時間を2人で過ごす。

「じゃあ、僕は後片付けをしてくるよ。リリスは風呂にでも入って、今日の疲れを癒してくるといい。」

「ありがとう、ロイド。そうさせてもらうわ。」

食後のコーヒーを飲み、彼女が一息吐いた頃に彼は［黒いポリ袋］を持って外へと出て行った。

「［今頃、リリアは何処で何をしている］のかしら？あぁ、［一体何処へ行ってしまった］の、リリア？」

［彼が外に出て行った事を確認した］彼女は小さく呟く。

「ハァッ・・・こんなに暗い気分のままじゃいけないわ。ロイドの言う通り・・・きっと、私も疲れが溜まっているのね。」

そう1人で愚痴を溢しつつ、［明かりの点いていない薄暗い廊下の先にある浴室の方に］・・・彼女は［杖を使う事なく、しっかりとした足取りで］向かって行った。