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まずは、杖を使って歩けるようになる事を目標にして、新たな生活に少しずつ慣れるようにと努力しました。
姉は以前と変わらず多忙なまま。
私にはもう姉を輝かせる手伝いは出来ないけれど・・・その分、誰よりも姉を応援していきたいという気持ちが以前よりも強くなったような気がします。
それから何年か経った頃・・・姉は急に以前、私達が住んでいた町に帰らないかと言ってきたのです。
詳しく話を聞いてみれば、私達が以前住んでいた町に新しく劇場が出来たみたいで・・・その劇場で働きたいという事でした。
・・・えぇ、それはもう驚きましたよ。
姉が[今の地位を捨ててまで、私と一緒にいたいと言う]のですから。
姉が所属する劇団は、この街のトップと言っても過言ではない程の有名な劇団。
それに対し、以前住んでいた町に新しく出来た劇場は・・・その劇団が開催する劇場の3分の1ぐらいの大きさなんです。
今より給料はだいぶ減ってしまうけれど、今まで頑張って稼いできたお金で私達は充分に暮らしていける、と・・・そう言って。
だから、私は姉に言ったのです。
私に縛られる必要はない、姉は姉のやりたい事をすればいいんだ、と。
すると、姉は笑って私にこう返しました。
『それじゃあ、明日から早速荷造りをしないといけないわね。』
私はその時・・・自分が姉と双子なのだという事を改めて思い知らされました。
[お互いがお互いを想い合っている]。
私達はお互いに離れてしまっては駄目なのだと・・・この時、私は理解してしまったのです。
そして、私は半強制的に以前住んでいた町に帰って来ました。
姉は団長さんに事情を説明し、新しく出来た劇場で働けるようにと、いつの間にか手続きをしていたみたいで。
団長さんは姉が辞める事を凄く惜しんでいたけれど、私達の事を優先してくれるような・・・とても優しくて素晴らしい団長さんなんです。
いつでも戻って来ていいから、たまには連絡をしておくれと言って、私達を送り出してくれました。
子供の頃、私達が住んでいた家は昔と変わらず当時のまま残されていました。
今は誰も住んでいないと言われたので、その家を買い取り、内装を少しリフォームして私は姉と暮らし始めたのです。
姉は新しい劇場の人達ともすぐに打ち解け、その劇団でもトップスターになりました。
私は私で懐かしい友達と再会して近状報告をしたり、時には近場を散歩するなど・・・平穏な毎日を過ごしていましたね。
そんな生活を始めて半月程経った頃。
私達は久しぶりに[彼]と再会したのです。
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