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【図書館】
ハナオがオリと初めて会話をしたのは学校の図書館だった。ハナオは最近読み始めた作家の、別の作品を探していた。図書館にはほとんど人がいなかったが、参考書関連の棚には生徒が数人いた。その中に、オリがいた。やはりオリはそこに浮いているように立っていた。他の生徒の中に混じって浮いている。ハナオはオリの姿をこっそり見ることが出来そうな席を探した。窓際の、館内が見渡せる席が空いていた。ハナオは小説の表紙を繰りながら、棚の陰にいるオリを見つめた。
オリが数冊の本を抱えて貸出カウンターに向かうのを見て、ハナオは席を立った。オリの後ろを歩いた。ハナオはオリのすぐ後ろに立った。こんなに近づいたのは、初めてだった。オリの香りがわかる。ハナオは周りに悟られないように、息を深く吸い込んだ。嗅ぎなれない香りを鼻の奥に感じる。
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