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「確保済みです」
「よろしい。では下僕一号よ、始めようか」
「御心のままに」
ふたりの姿はフェンスを乗り越え、屋上の突端にあった。風に漆黒のマントが靡く。それに気づいた幾人かが、何事かと足を止めて見上げてくる。なかには、またか、というような顔をしている生徒もいる。
総帥とよばれた黒マントは胸を張って、眼下の蟻粒たちにむかってアジテーターよろしく大声で呼びかけ始めた。
「無知蒙昧なる大衆どもよ! 我こそが、この七斗高校を裏から牛耳る悪の秘密結社《第六天会《だいろくてんかい》》一代目総帥、神野悪五郎である!」
そして、下僕一号とよばれた小さな黒ローブが、校舎の正面壁面に垂れ幕を開いた。その際「祝陸上部県大会出場!」と記された垂れ幕が完全にその陰に隠れてしまったが、気にする気振りもない。
『第六天会一代目総帥神野悪五郎』
「我は此度、諸君らに真実を告げに参った」
聴衆の意識がほどよくこちらにむいているのを確認してから、神野悪五郎は再度口を開いた。
「氷の女王――冷泉美冬よ、前にでて来てもらおうか!」
指名された名に、群衆に驚愕の波が走った。
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