1話 悪五郎、氷の女王と戦う

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「なんだ、アイスがすきなのか? ん? 氷の女王だけに。はっ――」  悪魔の高笑いがやまない。  項垂れた美冬の表情はうかがい知れない。  ふと、急に高笑いがひっこんだかとおもえば、悪五郎の威厳にみなぎった声色が殷々と朝の昇降口前に響き渡った。 「偶像が地に落ちる条件を教えてやろう。――人間がそこに勝手に抱く幻想が破られた時だよ。人間とは、なんとも身勝手な生き物じゃないか」  高笑いに、美冬はなにも言い返せないという風に、黙って頭を垂れているだけだった。心なしか、腕組みをした手が震えている。  高所から、満足げに、悪五郎は自身がもたらした混沌を見渡した。おのおの顔を見合せた群衆が嘆息をもらして、冷泉美冬という一人の少女に裏切られた落胆を隠そうともしない。 「みろ、冷泉美冬。しょせん、貴様の信奉していた世界などこんなものだ。ちょっとしたことで、たやすく瓦解する程度のもの。他人への信頼など、無意味だ。やつらは、簡単に裏切る」 「冷泉さんがスイーツ好きって、そんなのありかよ……」 「なんかさあ、それって、あれだよなあ?」 「うん。それって――」     
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