序章・技術中尉の憂鬱

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「ボクは、トンカチやスパナを握るために軍に入ったんじゃないっ!」 宇宙世紀0082年、月面都市フォン・ブラウン。 都市外れの小さな工廠「プラント708」では連邦軍所属の元戦闘機パイロット、ナオヤ・タカハシが月面駐留軍の技術士官として陳腐な日々を過ごしていた。 「一年戦争が終わって2年、大規模な戦闘があるわけでもないのに、どうしてこんなことを続ける必要があるんだ?」 散乱する工具を尻目に、少し病んだ目をしながら、ナオヤは無造作に置かれた設計図に目を通していた。 「こんなものを今更見たって、軍が採用してくれるわけでもないのに…」 そんな彼が、戦いに再び身をやつすことになるとは本人すら知る由もなかった。
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