0人が本棚に入れています
本棚に追加
私は時々、夢を見る。
普段は起きてしまえば現実に押し潰されて夢なんてすぐに忘れてしまうのに、その夢を見たときだけは覚えているのだ。
その日の夢の中でも、私は窓際の席に着いていた。
季節に関わらずセーラー服はいつも半袖で、教室には私以外誰もいない。窓の外は見事な夕焼け空で、室内を暖かなオレンジ色に染めていた。
実際の学校の制服はブレザーだし、放課後ひとりで教室に残っていることはない。それなのに、私は何の疑問も持たず大人しく座っているのだ。
やがて吹き込んだ風がカーテンを大きく膨らませる。私は咄嗟に目を閉じ、髪を押さえる。風が治まって目をゆっくりと開けると、そこには。
「おはよう」
『彼』が、優しい微笑みを湛えて立っていた。
最初のコメントを投稿しよう!