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夢から覚めると、私は彼の顔も話の内容も思い出すことができなくなってしまう。覚えているのは、夢の中ではいつも幸せだということ。それと、
――『本当にピンチになったら、俺のこと呼んで』
この言葉だけだった。
でも、夢の中で出会えばすぐに分かる。
彼は現実には存在しないはずなのに、私は出会う度にいつも懐かしさを感じる。だから彼の名前を知らない、というよりは、思い出せないという感じだった。
私はそのもどかしさを抱えながら、けれども聞いてしまったら何かが消えてしまいそうで、尋ねることができなかった。
そうして私は今日も俯きながら学校へ向かう。現実の教室には悲しくて辛いことしか待っていないとわかっていても、私は行くしかなかった。
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