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「おはよう」
夕日に縁取られた教室で彼の姿を目にした瞬間、私はうっかり泣き出してしまいそうになった。
彼は驚いたように尋ねる。
「…どうしたの」
「…どうしても、今日会いたくて」
私は今日あったことを話す代わりに、そう正直に告げた。言ってしまった瞬間恥ずかしくて身悶えたけれど、彼はその言葉を聞いて嬉しそうに微笑んだ。
「来てくれてありがとう」
私は勢いよく目を擦ると、彼に笑い返した。
「何かあったら呼んでね」
いつもと同じ、優しい言葉。私は小さく息を吸い込んだ。
「…そのことなんだけど」
弱い風が、カーテンを揺らす。心臓の音が、体全体に響いているのを感じる。
「…私、あなたの名前…」
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