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小さい頃、夜のドライブが好きだった。
週末は家から離れた場所にある菜園に行って、そこで野菜を収穫したり近くの山へ行って木の実やキノコを採りに行ったりするのが、我が家の休日の過ごし方だった。私が我儘を言って遅くまでそこにいたがるものだから、帰りはいつも夜になってしまったのだ。
うつらうつらと意識の遠ざかるなか、暗闇に輝く星空と眠たそうに運転する母、そして車内に流れる普段は聞かない時間帯のラジオを聞いていた。照明灯なんてほとんどない田舎道は、まるで自分たちしかいないみたいに孤独で特別だった。
いつもは夜遅くにお菓子を食べさせて貰えないけど、こういう時だけは特別で。眠気覚ましよ、と言ってキャンディーの袋を開ける母を見て、一個ちょうだい、と言いたいのに外で遊び疲れた身体は言うことを聞かない。いつも、いつも、今回こそは家に着くまで寝ないぞ、なんて思っても、慣れない夜更かしと心地の良い揺れで幼い私はすぐに眠りについてしまうのだった。
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