0人が本棚に入れています
本棚に追加
あらかた手続きが終わり家に帰った頃には日をまたいでいた
そして今でも脳裏に焼き付いている、主を待つ新居の和室に
障子を透過した月明かりに照らされた寿司桶が2つ
私は怒りと落胆、不条理と悲しみ
人間にこれほど同時に感情が共存できるのかという程に狂った
そして私は嗚咽しながら素手でその寿司を貪り食い
空になった寿司桶を壁に叩きつけ、「父さん」「母さん」と叫んだ
気がついた時は朝だったが、寿司桶は片付けられ畳に散らかっていただろう
米粒や寿司ネタもそこなはなかった
変わりに何も知らない娘が傍らにいた、
そっと抱きしめ、また泣いた
「パパ、どっかいたいの?」
そんな娘も今じゃ父を怪訝に扱う立派な娘に育ちましたよ、とおさん
そう思いながら、玄関で革靴に足を通す際ちょっと和室の襖を
開けてみた、いるはずもない両親を思い
最初のコメントを投稿しよう!