犬山 三郎左衛門の場合

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犬山 三郎左衛門の場合

拙者(せっしゃ)の名は「犬山三郎左衛門(いぬやまさぶろうざえもん)」。 随分(ずいぶん)と古風な名であると思われたかと思うが、我が犬山家は先祖代々と男が産まれると、男らしくあれとこのような名前を授けられる。 地元の名士であり数々の事業を成功させている現当主の祖父こと、じじ上に(たまわ)った誇らしき名前である。(ゆえ)に父上よりもじじ上を尊敬している。 拙者(せっしゃ)は平成の世に生まれい()武士(もののふ)であると自負(じふ)している。 今の世での元服(げんぷく)を済ませた二十歳である。元服(げんぷく)とは、成人の儀とでも言えば分かるであろうか? ……そうであった。犬神様こと狼の化身との出会いであったな。それは神々(こうごう)しいお姿で拙者(せっしゃ)の前に降臨(こうりん)なさったあの夜のことは、生涯(しょうがい)忘れることはないであろう。
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