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声がして振り向くと背後を少女が、否
少年が走り抜ける。
更に奥から裸も同然なボロぎれを着た老婆が包丁を持って追いかけて来るではないか!
「あんた、早くそいつを捕まえとくれ!」
「おい、貴様何を盗んだ!?」
「ひゃん!」
俺は少年の華奢な腕を掴んだ。
ここで取り逃そうものならプロ失格だ。
「あう、あわわ。はわわわ…」
少年はあわあわしている。
一貫の終わりだ。
「ケー!そいつ爺さんの片身のマゴマニピュレータを盗みやがったんだよ!」
それはどんな痒い所にも手が届く、孫の手の最終進化形と名高い
核戦争で滅んだとされる旧世界の遺物。
ゲルアクチュエータと自律思考回路が使用者の脳波を読み取り、体を這わせどんな形状にも変形可能な液体金属が任意の箇所を掻く、あるいは愛撫する。という孫に会えない寂しさを忘れさせる孤独なご老人の救済機具である。
「ぼ、僕はこの家電を売って赤ちゃんのミルクを買わなければならないのです。」
「ケー!汚い野良犬が!盗みと身売りは犯罪さね!あんた警察だろ、この小汚ないオトコノコを早く始末しちまいな!」
ババアが怒鳴る。
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