逆流

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「歪なる人モドキは殺すべし。 だが、それは貴様達の事だっ!!」 俺の左腕はとっくにレーザーカノンに変形済。 俺の叫ぶ声よりも速く、光の速度で発射されたエネルギーはルテスミ巡査の頭を貫通。 直線上に並んだババアの心臓を射抜いた。 「えっ、えっ?何で、おじさん半身サイボーグのオトコノコ捜査官なんでしょ? 僕を処刑するんじゃ…ないの!?」 少年は震えている。 「さあな。 ここにオトコノコは居ない。」 俺は自身の左目を隠す。 手形に戻った義手で覆っている今も尚、赤く光り輝き警告音を発している。 「おじさん!?大丈夫? 体から変な音がピーピー鳴ってるよ?」 「…気のせいだ。」 「ありがとう! あのっ僕、床毬名居射(トコマリ ナイイ)って言います。 友達からはナイーって呼ばれてます。」 「やめろ! それ以上俺に関わるな。」 俺は頭を抑える。 最早、自分でも自分が解らない。 赤ちゃんが居ると言ったこの少年の言葉に突き動かされたのだ。 無意識の挙動。 深層の記憶を探ると 身重の妻の笑顔が浮かぶ。 産まれて来る事を望まれながら遂に叶わなかった我が子。 名前も思い出せない妻の、名前の思い出せない俺との子供。 性別すらももう解らないが。
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