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「おはよう」
「……おはようございます」
当たり前のように目を見てあいさつしてくる先生。その瞳の奥に何か変化はないかと思って探ってみるけど、いつものクールな微笑みでかわされてしまう。
「そんなに時間ないから行こうか」
「……はい。じゃあ、行ってきます」
先生は後ろに回って車椅子を押す。先生らしいスマートな動きが柔らかくて温かくてとても好きだった。車の後部座席の定位置に着くと、緩やかに車は移動し始めた。
先生はコンビニで買ったコーヒーを口に運ぶと、スピーカーの音量を上げた。あっ、この曲は。
「『浦高』の新曲買ったんだ。フルで聴いたことある?」
心がきゅっと締め付けられる。けど、なんとか言葉を出した。
「いえ、まだです。PVは毎日見てたけど……先生、買ったならちょうだい!」
おどけてみせる。いつもの調子で。
「ダメ。自分で買いなさい。その方が売上にも貢献できる」
「はーい」
そんなちょっと意地悪なところも好き、なんだけど、本当に昨日のことはなかったみたいになってるなぁ。
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