ブラックコーヒーに杏仁豆腐を添えて

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また車が止まる。今日はずいぶんと信号につかまるみたいだ。だけど、それでよかった。車が止まる回数が多ければ多いほど、先生と一緒にいられる時間も長くなる。 ーー先生との車のなかでは話が止まらないのだけど、教室のなかではサイレントモードのように静かだった。引け目、みたいなものを感じていたのかもしれない。脚が動かなくなってからの1年間はほとんど中学に行けなかったから、学校という雰囲気に馴染めなかったのかもしれない。体育の時間はどうしたって普通と違う中身になるし、放課後クラスメートと一緒に帰るなんてこともできなかった。クラスにいるときは舞たちとおしゃべりできるかもしれない。けど、クラスを離れると、私は一人になってしまう。 「今日は大人しいんだな。いつもどこで息継ぎしてるのかってくらい話すのに」 窓の外にはちらほらと半袖姿も見える人の群れが歩いていた。一定のリズムに合わせて、規則正しく。クーラーが効いたここではわからないけど、きっと外は暑いのだろう。 「……私だって、話したくないときくらいあります」 なんだって先生に話せるわけじゃないんだ。誰が悪いわけじゃないし、みんな大好きだし、これはきっとどうしようもないことだから。 スピーカーの音量が下がった。 「……先生?」 「ちょっと寄り道していいか?」
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