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ーーあぁ、綺麗だなーー
早朝無線に届いた最後の肉声。
あの日の朝日はどのくらい美しかったのだろう。
今朝の朝日も綺麗だよ。一緒に同じ朝日を見ている、よね。
「雪が溶けたから捜索が再開されたんだ」
強い眼差しと硬い声の矢が胸を突き破る。
「兄さんはもう山にはいないよ。
先月見つかったんだ。それを言うために電話したんだ……」
「千葉くんは……」
「どこにもいない。山にも家にも……、兄さんは灰になって消えたよ」
「うそ」
「兄さんの友人にはハガキを出した。
けど、あなたには直接知らせたかった。
遺品の中に、あなたの写真を見つけたから……」
「聞きたくない。
……千葉くんの遺品?
うそッ!
帰ってください。もう二度と会わない。さようなら」
あんなに真っ白だった穂高は、ほとんど黒い山になってしまったよ。
千葉くん、千葉くんが綺麗だと言った冬山はもう終わったよ。
帰って来て。
待ってるから。ずっとここで待ってるから、お願い帰って来て。
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