♯4

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「もしもし」 『もしもし、誰だかわかる?』 きっちり1週間後にかかってきた『非通知』は、彼の存在を知らしめるものに変わった。 「うん、千葉くんだよね?」 でも千葉くんじゃない誰か。 『あたり』 「え?」 携帯を握りしめたまま佇んでいると、同じように携帯を耳に当てたまま近づく人影が見えた。 『誰だかわかる?』 耳にダイレクトに届く声と、外から回り込むような声。2音のハーモニーがいつもの文句で問う。何度問われてきただろう。『誰だかわかる?』と。 千葉くんと同じ目、千葉くんと同じ声、千葉くんと同じ……、 「ち、千葉くん……?」 『あたりだけどはずれ。千葉ノリタカ。……弟だよ』 千葉くんよりも少しだけ色が白い。少しだけ背が高い。少しだけ……、ううん。全然違う。彼は違う。 彼は千葉くんじゃない……。 『毎朝この高台に来てるでしょ? 最初の電話の時から毎週見に来てた。 おかげで休みだっていうのに、早起きの癖がついたよ』 この高台は千葉くんのお気に入りだった。街を見下ろせるこの高台で千葉くんの帰りを待つのが好きだった。 『いつまで待ってるつもり?』 「待っているわけじゃないよ」 いつだって千葉くんは待たせてくれなかった。帰ってくるとも、待っていてくれとも言ってくれなかった。 「ただの自己満足だよ」 千葉くんがいる穂高の山頂から漏れる陽光が、辺りに色を与えていく。 どんなに闇が深かろうとも、太陽に敵うものなどいないと見せつけるように。 2度目のアラームが鳴った。
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