第10章 俺にこんな隠された(微妙な)力があるだと!? 

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静かになった受験者たちを見ていたカーティスは顎髭を触りながら「もちろんこの試験は単純に南の森を抜けるだけではありませんよ」と補足する。 「ただ森を通り抜けるだけじゃ試験とは言わないからな。この試験は早さを競って貰う」 シグリさんが取り出したのは大きな紙。それを近くに生えていた大木に貼り付けた。 本を読む時に使うオリジナル翻訳手帳を取り出しながら『ルール説明』と書かれた内容を読む。幸い、異世界言語はとても簡単で「あ」が「ア」に書き換わっているレベルだった。ひらがなとカタカナの新しいバージョンを覚えている感じ。ただ王都に来た時にも思っていたが、本当に子どもが遊び落書きで作ったような文字なので全然覚えられない。 ルールを簡単にまとめると『1.いち早くキャンベル村に辿り着くこと。2.出会った魔物は全て討伐すること。3.評価項目は第一に早さ、第二に魔物の討伐数、第三に仲間との連携や助け合いができているか。以上を心と頭に刻み、試験に臨むべし!』と。 「出会った魔物は全て討伐、だと……!? なんて難しい内容なんだ!」 「そろそろツッコミは要らないですよね」 「……まぁ、うん」 冷たく慣れた態度に震えていた体はピタリと止まる。 お前は雑魚な魔物を倒せないだろ。もっとビビれよっと言いたい気持ちは分かる。だが俺はこれまで薬草採取を誰よりも繰り返し、ミニゴブリンから逃げて来た男。この森は俺の庭だと言って過言……過言だが、ある程度は把握している。ミニゴブリンの顔は結構見慣れた。 だが逃げれないとなると話は別。いつもの俺なら怯えてわんわん泣くのだが、 「余裕だろ?」 「右手だけで屠れますよ」 ゴブリンスレイヤーがいるので安心。完全にシルヴィア頼りの試験内容になりそうだが、一緒にパーティーを組んでくれて本当に良かったと心の底から思う。 「さっきは悪かったな。やっぱり俺、お前が必要だ」 「た、タケシさん!? もしかして、やっと私に依存を―――」 「頼むぜ、黒龍装備の最強肉壁!」 「ですよねー」 死んだ目で俺のことを最低な人でも見るかのような顔をするシルヴィア。なんて失礼な奴だと口にしたいが、 「……本当に頼りにしてるからそんな顔すんな」 「デレた!!!!」 「大きな声で言うな馬鹿この!」 「はいそこの凸凹カップル。最初はお前らから試験を受けて貰う。余裕がありそうだからな」
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