第6章 リバース&リバース&リバース

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逃げようとしてもシルヴィアの力は強く、服をがっしりと掴んでいる。何で女の子に抱っこされなきゃいけないんだよ! 絶対に嫌だぁ! 身の危険に俺の酔いは一気に醒めてシルヴィアに顔を近づけさせないようにする。助けを求めたいが、既にビオラはどこかに行ってしまっていた。 「何を吹き込まれたか知らんが、抱っこはやめろ! これ以上俺に恥ずかしい思いをさせるな!」 「……デート」 ポツリと呟いた言葉にタケシの体は硬直する。顔を逸らすがシルヴィアは下から俺の顔を覗きながら笑顔を見せる。 「言語を教える代わりにデートを一回してくれる……約束しましたね?」 「……お前、本気で誘う相手を間違ってるからな。謙遜とか遠慮とかじゃないぞ」 最後の忠告にシルヴィアの笑顔は崩れない。それどころか嬉しそうな声音で、 「拒否しないということは、してくれるんですね!」 「……悪魔に代償を払わないままだと殺されそうだからな」 「じゃあ明日来なかったら殺しますね!」 めっちゃ良い笑顔で殺害予告された。余計な事を言わなきゃよかったぜ。 リアル女子とデートした経験とかないぞ俺。友達として遊んだ記憶はあるが、この異世界にはショッピングモールも無ければ、カラオケやボーリングといった遊ぶ場所も無い。 (オシャレなお店で飯を食って、王都をブラブラして、最後は宿に帰る……ん?) 異世界デートって、こんなにショボかったか? あれ? もっとキラキラと輝いていたイメージがあったはずだが? 今まで見たアニメや漫画の物語を思い出すが、どうしても分からない。比較しても……比較しても……あっ。 (冴えない主人公どころか二十歳のフリーター野郎のせいか) デートする組み合わせが俺とシルヴィアだもん。大抵の主人公はカッコイイからヒロインの隣に立っても見慣れていて違和感がないけど、宝石の隣にゴミが置かれていたら目立つもんな! 自虐しているが問題点はそこだ。デートプランだってまともに思い付いていないし、何をすればシルヴィアが喜ぶのかも分からない。って違う違う! (シルヴィアを喜ばせてどうする! 好感度を下げるチャンスだろ!) 頭の中で自問自答を繰り返し必死にデートについて考えてしまう。 グルグルと思考を回転させていると、テーブルにお酒が入ったジョッキが二つ置かれる。
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