第6章 リバース&リバース&リバース

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「体の調子は良さそうだけど、何を悩んでいるんだい?」 「テオか…」 俺の隣に座るとテオはジョッキを一つこちらに渡して乾杯する。未成年のテオのジョッキにはお酒は入っておらず、ジュースが入っていた。雰囲気だけでも楽しみたいと恥ずかしそうに説明してくれた。 シルヴィアはセリーナの所に移動して「ついに明日、タケシさんとデートしますよ!」「やりましたね! 明日はバッチリとオシャレしてください!」と俺の胃にプレッシャーが掛かる会話が聞こえて来た。小さい声でやり取りして。ギルドに居る男たちの視線が怖い。 「テオ、助けてくれてありがとう。まずは最初に言いたかった」 「違うよ。きっとタケシの運が良かっただけ。僕達は何もできなかった」 「運が…良かった…だとっ…!?」 「そんな戦慄しながら言わないでよ。本音だからね?」 あのクエストを全体的に見て「幸運」だと言える部分がどこにあるだろうか? 全てが不運にまみれているだろ。 何故そんなことを言うのかテオに聞くと、 「ファフニールは、英知の竜とも呼ばれている。人類が得られないような知識を数え切れない程持っているんだ」 「……英知の竜」 つまり、賢いドラゴン。そんな相手に俺は一体何をしたのか思い出す。 特にファフニールの前で必死に子どもドラゴンの真似をしていたことを。 「絶対にバレてたじゃん」 「そうだね。気付かないはずがないよ」 真顔で答えを言うと、真顔で頷かれた。真っ赤になった顔を両手で抑えながら絶望する。完全無敵の馬鹿だよ俺。 「じゃあジャイアントホーンの肉を俺に食わせていたのは嫌がらせじゃねぇか! 遊ばれていたのか!?」 「そうだね」 「そこは否定して欲しかった!」 「ごめんごめん。だけど、ファフニールが何をしたかったのか未だに分からない。最後は見逃してくれたし、謎が多かった」 真剣にあの日の事を考える勇者に俺は溜め息しか出ない。聞きたくなかったよそんなこと。 だが「幸運」なのは本当なのだろう。もしファフニールの機嫌が悪かったら死んでいたのかもしれないのだ。元々好戦的じゃない竜だとしても、幸運だから今生きている。 「それと、ファフニールは姿を消していたよ。子どもドラゴンと一緒にね」 「どこかに行ったのか?」 「多分ね。世界を飛び回っている竜だから全然不思議じゃないけど」 「人騒がせなドラゴンだな」
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