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おかしい。
扉の鍵も、窓の鍵も、部屋を完璧に防犯したはずなのにシルヴィアはベッドで寝ている俺の横に立っていた。
「おはようございます。今日はいい天気ですよ」
「お前、どうやってこの部屋に入っているの。前は窓からだったよな」
「あ、それはダミーです。別の侵入で来ました」
「その侵入口を塞がねぇと二度と安眠できないけど?」
飛び起きて壁や天井、床まで調べたが隠された侵入口は見つからない。俺のプライベートが徐々に侵害されている件について。
キョロキョロと探していると、シルヴィアに服の裾を掴まれる。少し恥ずかしそうに俯きながら、
「ど、どうですか?」
「行動を自重しろ」
「そうじゃなくて、服ですよ服!」
「服ぅ?」
シルヴィアの服装はいつもの武装した服ではなく、フリルの付いた白いワンピースを着ていた。大胆に肩を露出させ、手にはつばが広い白いハットを持ち、髪を結っていた青いリボンが装飾されている。
コメントを求められているのならハッキリと言おう。
「やればできる子なのにどうしてこんなにも残念なことに…」
「微妙にプラスな反応なので喜びます」
ポジティブか。
「分かった分かった。部屋で待ってろ。準備できたら呼ぶから」
「手伝いますよ?」
「はよ出ろ」
「せめて上着だけでも!」とかアホなことを抜かす美少女を部屋から追い出した。扉の前で溜め息を吐き捨て、
「アイツが俺のヒロインとかマジか…」
顔を赤くしながら額に手を当てる。扉の前で立ち尽くし、脳内ではシルヴィアのデート服が何度も思い出されていた。
最初からアイツが可愛いことは分かっていた。でも本性を知ってから冷めたはずなのに、ここで挽回して来るか。
友達と遊ぶ感覚でデートをしようとしていたはずなのに、絶対に意識してしまう。落ち着けと何度も心の中で唱えるがバクバクと激しく動く心臓の鼓動は止まらない。
頬の熱が収まるまで部屋からは出ず、村人の着るような服でシルヴィアを迎えに行く。
(平常心。そうだ、平常心平常心)
いつも心に余裕を。唾を飲み込み、前髪を整える。
シルヴィアの部屋をノックして、返事を待った。
「い、今出ます!」
バタバタと音を立てながら扉が開く。彼女の頬は少し朱色に染まり、目が合うとピタリと動きを止めた。
「ど、どうした?」
「あの、その、よろしくお願い…します…」
何か緊張して来たよ。
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