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信じられない現実に、信じたくない光景に、俺は手に持っていたクッキーを獰猛な口へと放り投げる。
突然の出来事に戸惑った俺の取った行動。それは最後のチョコクッキーをドラゴンにあげることだった。
「これで見逃して☆」
カプッと服の襟を噛まれて持ち上げられた。なるほど、俺の爽やかスマイルは通じなかったか。
抵抗する暇も無く足は浮いてしまい、ファフニールは翼を羽ばたかせて上昇しようとする。急いで服を脱いで脱出しようとするが、既に落ちれば地面に叩き付けられて死ぬくらい高い。
地震を起こしながらファフニールは跳躍する。グワンッと体が重くなるが、次の瞬間には空にいたのだ。
全身で風を感じ、白い雲が真横にある。浮いた足元を見れば王都を見渡せるくらい小さくなっていた。ファフニールと自分は高い空に居るのだと実感させられる。
少しずつ遠ざかる王都を見ながら青ざめる。全身の震えは止まらなかった。
状況が整理できず、何が起きているのか分からない。どうして俺を捕まえたのか。
とにかく、このままどこに連れて行かれるのか不安と恐怖で一杯一杯だった。
「た、助けてえええええぇぇぇ!!!!」
泣きながら出した叫び声は、誰にも届かない距離だった。
突然始まった理不尽な展開に、タケシには為す術がなかった。
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