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ファフニールに攫われた男性はまさかのタケシ。その事実を知ったギルドメンバーは驚きを隠せなかった。
一番に食い付いたのはテオ。後ろからドタドタと走りながら近づいて来た。
「すぐに助けに行こう! 勘ですが、嫌な予感がする!」
「テオの言う通りだ。俺たちの仲間を助けに行くぞ!」
シルヴィアの不安を消すようにテオとシグリの掛け声でギルドの者達が大声を出す。武器を掲げ、拳を掲げ、全員の士気は高まっていた。シルヴィアも急いで武装しようとギルドを出ようとするが、
「そこまでだ」
ガシャガシャと金属音がぶつかり合う音が聞こえた。音を辿ればギルドの入り口には銀色の甲冑を装備した騎士がズラリと並んでいる。
武装した者達の持つ盾や鎧に刻まれた獅子の紋章を知らない者はいない。
「騎士団!? ど、どうしてここに…!?」
王都や城を守る一般の兵とは違い、王族や貴族を護衛する役目を持つ団体を騎士団と呼ばれている。銀プレート級の強さを持ち、女王直属の騎士は金プレートと同等の力を持っている。
騎士団の訪問にシグリの顔つきが険しくなる。
「何の用だ」
「これより王都の護りを固める。金プレート所持者は城の中へ、銀プレート所持者は城壁を守るように」
「なっ!?」
騎士団の言葉にテオは耳を疑う。まるでタケシの救出をするなと言っていた。
「これは騎士団長様の命令だ」
「断る。仲間を見捨てるほど俺たちは腐っちゃいねぇんだ」
シグリの拒否にギルドメンバーたちも頷く。睨み付けるように騎士団を見ていたが、
「これは女王の命令でもある。国の一大事に命令を背くことは許されない」
続けて放たれた騎士団の発言にシグリは奥歯を噛む。このまま逆らえば反逆罪として理不尽に裁かれてしまうからだ。
ギルドが静寂に包まれる中、騎士団は踵を返す。無言のままギルドから出て行った。
ドガッ!と誰かが椅子を蹴り飛ばした。音がする方向を見れば、レディシュの姿があった。
「ふざけてる…騎士団だけで十分でしょ!」
「貴族の連中がビビったのね。自分を守る盾はいくらあっても困らないもの」
レディシュの怒鳴り声にビオラが呆れながら蹴り飛ばされた椅子を起こして座る。
前代未聞の事態に上層は混乱しているのだ。銅プレートに指示が無かったのも「雑魚はいらない」と言っているようなものだ。
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