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礼を言うようにファフニールは深々と頭を下げる。感謝されていると分かると、デカイ頭をポンポンと叩いた。
「子どもが待ってるだろ。早く行けって」
低い唸り声を上げながら顔を俺の体に擦り付ける。あの、服が汚れるので……もういいよ。今日限り許してやる。
ジャイアントホーンの血がどっぷり付いた服を諦めていると、何かが俺の足元に落ちた。
サッカーボールくらいの透明な球体だ。ガラス玉のような物が何でこんなところに?
「そ、それは!?」
ガラス玉を拾うと、テオたちが顔色を変えて驚愕していた。
「竜宝玉じゃないか!?」
「竜宝玉?」
なぁにそれぇ?とアホみたいな顔をしているが、『宝玉』というワードを聞いた時点でグッと大事に抱えている。完全に俺の物だと主張していた。
「ドラゴンが隠し持っている宝玉のことだよ。まさかファフニールの涙が宝玉になるなんて…とにかく、魔石とは比べものにならないくらい希少価値の高い物だ。僕が知っている価格なら……確か三億はくだらないはずだよ」
「ささささささささしゃ、三億ぅ!!??」
とんでもない金額にガクガクと足が震えていた。驚きの勢いで漏らしそうになる。
こ、これを売れば異世界で豪遊できるぞ! 寿命が来るまで危険なことはしなくていい! 薬草採取も、ミニゴブリン退治も、自由を手にすることができる! イヤッホォーイ!!
テンションが上がったタケシはファフニールの頭部に抱き付き、何度もキスをする。
「お前大好き! 遊びに来る分にはいつでもいいからな!」
「熱い掌返しですね…」
態度を一変させたタケシにセリーナは苦笑いだ。
「た、タケオ…? もちろん、分けるわよね? お願い分けて…タケオの専属装備士になって無料で付与魔法を使うから…」
「約束は守るぜレディシュ。帰ったら飯は奢るぜ」
「せこいわ! この男、せこいわよ!」
馬鹿野郎! この宝玉は俺様の物だ! 一銭も分けねぇよ!
「欲しけりゃファフニールに貰うんだな! ま、心を許しているのは俺だろうけどな!」
「ファフニール様! 私にも……っていない!?」
上を見上げればファフニールは翼を羽ばたかせて飛んでいた。こちらをジッと見ながら高い空へと帰って行く。
「そ、そんなぁ…」
凄く残念そうに両膝を地に着けるレディシュ。実に哀れな少女だった。
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