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エピローグⅠ
突如起きたドラゴン騒動。ファフニールたちを見送ったあと、俺たちは無事に王都まで帰ることはできたが、嘔吐を我慢できなかった者たちを介護しながらだったのでかなり疲れた。こんなことなら治癒魔法を素直に掛けて貰っておけばと何度も歩きながら後悔した。
王都の城壁には仲間たちが待っており、帰還したことに喜んでくれて―――あまりの臭さに二次被害が起きた。申し訳ない気持ちで一杯だが、自分たちだけではどうしようもないので助けて欲しかった。
綺麗になったあとは王都に入りギルドに直行。俺の為に全力で動いてくれたシグリさんと涙の再会を果たした。俺たちが無事だと分かると心の底から帰還を喜んでくれた。
そして数日が過ぎ、今日は楽しい楽しい宴が始まろうとしていた。
「乾杯!」
『乾杯!!!』
シグリさんの音頭に歓声を上げるギルドの者たち。ジョッキを掲げて豪快に酒を飲み干していた。
また女の子に囲まれて困った顔をしているテオ、それをジト目で見ているビオラとセリーナを見て笑いが出てしまいそうになる。
「あの勇者は最終的に何人女を作るか、賭けでもするか?」
「やめてあげなさいよ。酔ってるの?」
部屋の隅には竜宝玉を大切に抱えながら酒を飲むタケシ。その隣にはレディシュがモグモグと料理を食べていた。
「少し酔ってるかも。結構飲んだからな」
「シルヴィアに迷惑かけたら私が許さないわよ。どうせタケオのことだから酔った勢いで押し倒したり―――」
「それは不味い! 誰か水をくれぇ!」
「……自分から避けている点は褒めてあげるわ。男としてはマイナスと思うけど」
洒落にならないぞ! この宝玉で自由を手に入れようとしているのに自分から鎖で体を縛るような真似はしたくない!
グラスに入った水を一気飲みして酔いを覚ますと、噂をすれば何とやら。
「タケシさん! 皆さんからドワーフ族の名物酒『ザ・シ』を分けて貰いましたよ!」
「何だその『The・死』みたいな酒の名前は!? うっわ臭っ!? 凄い酒臭いぞ!?」
嬉しそうに樽を抱えて持って来たシルヴィア。レディシュも顔を歪めてお酒から距離を取ろうとしている。
「大丈夫です。酔っ払っても竜宝玉は私が守りますから!」
「まだ狙ってんのかよ」
レディシュより諦めが悪かった。大金を手にすれば俺がシルヴィアから離れるとずっと危惧しているらしい。
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