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「もう諦めろよ。お前らだって最強の装備を手に入れて満足だろ?」
今は着ていないが、シルヴィアたちは最強の装備を手に入れていた。
ゲームをやっている人たちなら予想できるだろう。討伐したバハムートの死体の使い道を。あの頑丈な鱗、鋭い爪や牙は武器と防具になるのだと
ギルドに居る者達が羨ましそうにしていた。歴史に名を刻み続けていたドラゴンの素材で武器や防具を作るのだから当然と言えば当然。俺を除いた五人は装備を手に入れることができた。とても貴重な素材を前にしたカーラさんとオズさんは大変喜んでいたことも思い出す。
「タケシさんだって貰えば良かったじゃないですか!」
「いらないよ? 二度と王都から出る気は無いからな!」
「ファフニールが聞いたら泣くわよタケオ」
そんなことはない! 俺はアイツらの幸せを願うし、アイツらだって俺の幸せを願うはず。ほら、ちゃんと心は通じ合っているだろ?
「これは俺が死に物狂いに頑張った褒美だろ? この金で俺は胸を張って幸せを掴み取るよ」
「最後の攻撃は外したじゃん」
耳が痛いからやめて。
「ま、私はバハムートの装備に付与魔法を使う楽しみができたから宝玉はいらないわね」
最初は欲しがっていたレディシュも今じゃ宝玉に興味無し。仲間が減ってシルヴィアは悔しそうに樽を俺の顔にぶつける。
「どぅふっ! まぁ怒るなよシルヴィア。別にこれでサヨナラというわけじゃない」
「タケシさん…」
「まぁその、今まで世話になったし…俺はお前のことが嫌いじゃないし…なんというか…」
後頭部を掻きながらポツポツと話すタケシにシルヴィアは頬を赤くして俯く。そんな空気にレディシュはニヤニヤとしていた。
「俺はっ! そのっ、シルヴィアのことを―――!」
「大変です副ギルド長おおおおおぉぉぉ!!」
バンッ!とギルドの入り口が勢い良く開かれた。全員がビクッと驚き、何事かと見ると真っ青な顔で男が息を荒げていた。
「はぁ…! はぁ…! たった今、騎士団から多額の請求が届きました!」
「何だと!? 見せろ!」
シグリさんは男から紙を奪うと、手にしたジョッキを床に落とした。
「何だこの金額は…!? まさか払えっていうのか!?」
おっと、嫌な予感がして来たぞ。
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