エピローグⅠ

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「何でウチが払わなきゃいけねぇんだ! ドラゴンの問題を解決したのは俺たちのギルドだろう!」 「山にジャイアントホーンの肉が大量に撒かれたせいですよ! 風に流れた激臭は近くの森の環境破壊を引き起こし、村や町はまともに外に出られないほど被害が出ており…」 ファフニールとバハムートが戦闘した地は酷いことになっていたようだ。あの嘔吐を抑えきれない臭いが遠くまで蔓延しているという。魔物の分布を動かし、町や村は外出できない状態が続き、大騒ぎになっていると男は説明する。 ジャイアントホーンの肉をバラ撒く原因を出した犯人はこっそりと立ち上がりバレないように歩く。 「騎士団長からは『バハムートを討伐したことは誇っていいことだ。だがこの問題とは話が別。金で解決するだけマシと思え』と言われて…これでも格段に安くなった金額です」 「……騎士団の連中は、元々いくら払わせるつもりだったんだ」 「ゼロがもう一つ、後ろに付きます。特別討伐報酬金とバハムートの研究素材提供金、その他諸々から差し引いた額が紙に記載された金額です」 男の説明にシグリさんは頭を抱える。しばらく黙っていたが、事情を皆に説明する。 「……悪いがギルドは借金を背負うことになる。全員で協力すればいつか返せる金額だ」 「待ってください! それは僕たちが問題を解決すればいい話なのだけでは!?」 実際にバハムートと戦闘を繰り広げたテオが手を挙げて異論を唱える。だがシグリは首を横に振る。 「戦ったのはお前たちかもしれないが、王都に居て何もできなかった俺たちにも責任はある。金で解決できるなら全員で多くのクエストを達成して払おう。そうだろお前ら!」 先程まで『借金』という言葉に嫌な顔をしていたのに、シグリさんの声を聞いてから皆の態度は変わる。仕方ねぇなと、やってやるよと口にしてくれている。 ギルドの思いがまた揃い始めた。部屋の端では音を立てないようにゆっくりと窓に手を伸ばす男の姿があるが、誰も気付いていない。 そして、決定的な言葉をシグリは口にした。 「それに、ジャイアントホーンの肉をバハムートにぶつける提案をしたのはタケシだろ? アイツに全額擦り付けても一生払えないだろ? 三億テイアなんて」 ワッと皆の大きな笑い声が響き渡った。だがピタッと動きを止めている人物が何人かいた。
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