34人が本棚に入れています
本棚に追加
「待って。借金する額って三億テイアなの?」
静かに話を始めたのはビオラ。冗談や笑い話の雰囲気は無く、獲物に狙いを定める女の顔をしていた。シグリも少し驚きながら頷く。
「お、おう。そうだが…どうした? 悪い顔だぞ?」
「タケオー? どこに行ったの? 出て来なさいよー」
全身が震え始めて滝のように額から汗が流れる。タケシは急いで窓を開けようとするが、上手く開かない。
これで最悪なことになったら神を呪う。呪って呪って、百回呪ってやる。
ありえないだろ。ピンポイントに金額が一致しているなんて、破産フラグを立てた覚えはないぞ!
ポキポキと手を鳴らしながらレディシュは探し始めている。他の者達は状況を理解できていなかったが、
「タケシを探すんだ皆! 彼は竜宝玉を…三億テイアを持っているんだ! 売られて逃げられる前に捕まえないと!」
ついに言いやがったテオの奴め!
隠密行動などしていられない。ガコンッ!と窓を勢い良く開くと、全員がタケシを見つける。三億テイアの竜宝玉を抱えて、逃げようとする瞬間を全員が目撃する。
ギルドの窓から逃げようとするが、手を掴まれてしまう。
「タケシさん、このままだと私たちは一人当たり百万以上の借金を背負うことになります」
「し、シルヴィア…!」
ずっと俺に目を付けていたのかコイツ…!
「三億テイアを全員で返すのにどれくらいの月日が必要でしょうか」
「皆で頑張れば早く返せる額だろ? 大丈夫、きっとできる。俺も自分の分はちゃんと返すからさ」
微笑んだまま手を離してくれる気配はない。むしろ力が強くなっているのを感じる。
辺りを見渡せばジリジリと俺との距離を詰めるギルドの者たち。彼らの目は獲物を狩ろうとする狩人の目だ。
「ま、待ってくれ皆…話が違うだろ? 皆で返すんだろ? 貧乏人から金を巻き上げたりしないよな?」
「そんな酷いことはしないわよ。ねぇテオ」
「ああ、僕たちは盗賊じゃない」
ニコニコ笑顔のビオラとテオ。完全にロックオンしているだろ宝玉に。
「話し合えば分かるはずだからね」
「笑顔で剣抜いたぁ!! ふざけんなよクソ勇者! 何が話合いだコラ! 完全に脅しているだろ!」
気が付けば全員が武器を構えている。おかしい。この短時間で俺たちの友情はどこに消えた。
こんな非道は許されるはずがない! 一番の常識人に助けを求める。
最初のコメントを投稿しよう!