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「シグリさん! 俺は一生懸命頑張ったから竜宝玉を手に入れたのですよ!」
「タケシ。別に借金を背負うわけじゃない。ただ、明日からいつも通りの生活に戻るだけだ。頼む、分かってくれ」
「全然駄目だったチクショウ! 少し申し訳ない顔してるから恨めねぇ!」
こうなれば俺も売るしかない! 大切な仲間を!
「バハムートの素材で作られた装備だって大金になるはずだ! 俺の竜宝玉なんかより…」
「タケオ。私たちは自分の身くらい守れるわよ」
「返り討ちにする気満々じゃねぇか!? 周りもビビって俺を狙うなよ!?」
当然金プレートに逆らう者はいなかった。確実に倒せる俺を狙っている。
だったらと俺は最終手段に出る。逆にシルヴィアの手を掴んで向き直る。
「シルヴィア、俺と一緒に逃げよう。お前の借金だけは俺が背負ってやる」
「タケシさん……」
頬を赤くしたシルヴィアは手を握り返す。不安だがまずはシルヴィアに頼ろう。徐々に味方を増やして逃げる隙を―――!
「まだ勘違いしているようですね。何度でも言います。私は、タケシさんがお金持ちであることが気に入らないのです!」
「そうだったね! 死んでしまえ!」
ババーン!とドヤ顔で決めるシルヴィアに裏切られた気持ちになった俺は泣きそうになる。完全に逃げ場を失っていた。
しかし、シルヴィアは小さな声で本音をこぼす。
「それに、タケシさんとはまだまだ冒険をしたいです。どれだけ弱くても、私が守りますからね!」
心の底から全然嬉しくないことを告げるヒロイン。同時に俺の手から竜宝玉が奪われてしまった。
理不尽な運命に涙を流すしかない。また薬草採取の日々が、ミニゴブリンから逃げる日々が、帰って来ようとしている。
ただのフリーターだった俺が奇跡的に生き残り、奇跡的に手に入れた大金で、奇跡の大逆転をする物語だと思っていたのに…!
「ささ! 今日は飲んで忘れましょうタケシさん! 最後は酔っても介抱しますからね!」
クズでダメな男に自分を依存させたいと、自分がいなきゃ生きていけないような男にすることを目的にしているシルヴィア。彼女の計画だけは順調に進んでいた。
「タケシの金に、乾杯!」と仲間たちからお酒を頭から掛けられて慰められている。
「何で俺だけこんな目に…! 何でだよおおおおおぉぉぉ!!」
これから異世界で、フリーターだった俺に何ができるの!?
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