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プロローグⅡ
―――その日から町に朝が訪れることはなかった。
どれだけ時間が経っても、どれだけ寝て覚めても、空は漆黒に包まれたまま。まるで町が暗い箱の中に閉じ込められたかのように。
「さぁ始めよう。今日からここは僕の楽園さ」
あの日、中性的な声が聞こえた瞬間、青空が突如消えたのだ。
そして次々と女性の悲鳴が町中から聞こえることになる。腕に自信の有る男たちが必死に守ろうとするが、女性たちは消えていく。
止まることのない神隠しに民間人は怯え、何が起きているのか分からない状況に恐怖した。
騒動を止めようと武器を持った兵士たちは道に倒れている。それが敵の強さを物語っており、絶望の檻に閉じ込められたのだと理解する。
「そんなっ…やめろ…違う、俺はっ!?」
今日もまた女性は消え、男の悲鳴が町に響き渡る。
また耳を塞いで現実から逃げる。助けを待つ日々に、限界が近づいていた。
暗闇の楽園から、誰も逃げることはできない。
あの黒い翼を広げた悪魔に、勝てる人間はいないのだ。
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