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第5章 ドラゴンは終盤まで出さなくていい(懇願
俺に声をかけたのは紅色の鎧に蒼いマントを羽織った勇者みたいな恰好をした男だ。
黒い瞳にイケメンな男を際立たせる銀髪。そして首から下げた金プレートに息を飲み込む。どうして俺のような底辺に声をかけたのか、理由が全く分からなかった。しかも一緒にクエストに行こうと誘われた。
「自己紹介が遅れたね。僕はテオフィリス・サリヴァン。テオと呼んでくれて構わないよ」
爽やかな笑顔に俺は微動だに動けない。ここに来てコミュ障が発動していた。
(に、苦手なタイプだこれ! 陰キャの俺とは真反対な奴が来たぞぉ!)
背汗が凄いことになっている。爽やかな笑顔に、マイナス爽やか変な顔をしているだろ俺。「突然リア充に話しかけられて「アッアッ」しか喋れない」くらい酷いことになってる。
「え、えっとテオさん? どうして俺なんかとクエストに? 雑魚の中の雑魚、キングオブザコの俺ですけど」
「呼び捨てで構わないよ。やっぱり君も……大丈夫、もっと自分に自信を持って欲しい。これから僕と一緒にクエストに行けばきっと自信が出るさ!」
ヤバイ。なんか面倒なことに巻き込まれそうな予感がビンビンする。
アニメや小説でよく見るタイプの人間だ。主人公たちに面倒事を持って来る感じのキャラ。
「どうやらタケシはまだ低ランクのクエストしか受けていないようだね」
いやいや、薬草採取だけしか受けてないですよ。
「本当はもっと上のランクのクエストを受けたい…けど自信がない。でしょ?」
いやいや、ミニゴブリンすら倒せないから自信の有無という問題じゃないから。
「だから僕達が戦い方をタケシに教授してあげようと思っているんだ」
「な、なるほど」
だがテオの提案した話に悪くないと思った。
元々剣の振り方なんてアニメや漫画で見るくらいだ。剣の基礎は1ミリも分からない。秘奥義やら必殺技の極意なら知ってるけど絶対に到達できないから意味ないな。
振り方の一つくらい覚えることができたらミニゴブリンを倒せるようになるのでは?
「……同行だけでいいのか?」
「後ろで見るだけで構わないよ。クエストの報酬も半分で分けよう」
「いいのか? そっちは損するだけだぞ」
「あまり自分の口で言うことじゃないけど、人の善意は受け取るべきだよ」
ペカー!と輝く笑顔を振りまくテオ。その神々しさに俺は両膝を着きそうになる。
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