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第7章 この一瞬だけでも主人公にしてくれ
タケシがファフニールに連れて行かれたあと、王都は大パニックに陥っていた。
魔物を寄せ付けない結界を無視し、鉄壁の城壁は容易に越えられ、一人の男が攫われた。この異常事態に王都の兵は城の護りを固め、ギルドは緊急招集をかけている。副ギルド長であるシグリは指示を出していた。
「銅プレートの連中は城壁で見張りだ! 銀プレートは戦闘に備えていろ!」
「副ギルド長! 武器の調達、防具の調達、全て終わりました!」
「こっちも完了です! いつでも戦えます!」
的確な指示を聞いた部下たちの行動は早く、討伐する準備は整っていた。あとはファフニールの居場所を探るだけだが、
「報告します! ファフニールは南の森を越えた山に向かったと偵察隊から伝令が来ました!」
「よくやった!」
偵察隊がすぐに居場所を突き止めた。シグリは頷くと斧のような武器を背負い、攫われた男性を救いに行こうとする。
「久々にギルドに顔を出したらドラゴン退治って…ついてないわね私」
「討伐はしない。相手が悪過ぎる。今回は攫われた男を救出するだけだ」
赤褐色の髪を指で触りながら溜め息を吐いたのはレディシュ。緊急招集に金プレートである彼女も呼ばれていた。
ファフニールは絶対に勝てる相手ではない。このギルドに所属する金プレートを集めても足りない。今回の目的は救出だけに専念する。
「討伐はそのあと。他の街から助力を要請してから討伐になる。だがまぁ、逃げられるだろうがな」
「元々戦う気がないでしょ?」
シグリが犠牲の出る戦いをしないことを見抜いていたレディシュ。頭を掻いて誤魔化しているが、彼女にはバレバレだった。
「あーあ、これだからギルドは面倒なのよ」
「そういうな。ギルドを通して友達もできただろ?」
「……まぁタケオは置いといて、シルヴィアは楽しいわよ」
恥ずかしそうに呟くレディシュを見てシグリの口元はニヤけてしまう。少しはギルドに顔を出してくれるようになるだろう。
その時、バンッ!とギルドの入り口の扉が開かれた。現れたのは白いワンピースを来たシルヴィア。飛び込んで来た美少女に周囲は唖然とする。
「た、大変ですっ…! ファフニールがっ…!」
「ああ、分かっている。状況はこっちもある程度のことは把握して―――」
「タケシさんを、連れて行きましたぁ!!」
「―――何だとぉ!!??」
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