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第10章 俺にこんな隠された(微妙な)力があるだと!?
こうしてギルド採用試験は始まった。
ギルド【アナスタシア】の副ギルド長を務め、現役金プレート所持者のシグリ・アルフレッドに、王都ウィナフレッドの女王を護衛する騎士カーティス・ウォーレン。大物二人が見守る採用試験に受験者たちに緊張が走る。
一体どのような内容の試験なのか。女王騎士団が見ている前で対策が取れる昨年と同じ内容の試験をやるはずがないと。
周囲からコソコソ話で聞き取った内容をシルヴィアに尋ねると、
「昨年は受験者全員が一斉にテオさんたちのパーティーに戦いを挑むという鬼畜試験で―――」
「どうなったか結果を当ててやろうか? 受験者は全員死んだ」
「死んでませんよ。ですが負けた辺りは正解ですね。結果としては採用者はゼロでしたが、シグリさんの譲歩で三人くらいは合格しました」
まぁそんな結果になるだろうな。テオとか手加減とかできないタイプの人間だろ。真面目過ぎて。
「村の男の子が言っていました。『可愛い女の子に騙された。あのパーティーと関わったら命が危ないと思う』と」
「それドラゴン事件の前に知りたかったわ」
その予言当たってるじゃん。危うくドラゴンに命を取られる所だったわ。だがテオはポイズンバタフライのクエストに行っているからギルドにいない。よって昨年の内容とは違うだろうと予想できる。
全員が静かに待っている中、シグリさんが咳払いをして試験の説明を始める。
「今回行う採用試験の内容は三つ。それぞれ試験に得点があって、三つの合計点数で合否を決めることになる」
「最初の点数が悪くても諦めず、残り二つで挽回すればチャンスはあるというわけです」
やはり昨年とは全く違う内容だ。シグリの説明にカーティスが補足する。
「まず最初の試験はギルドの奥で行う。内容は、筆記試験だ」
「うげぇ…」
つまりテスト。どうやら学生時代から永遠に好きになれない紙とご対面するらしい。数学以外高い点数を取ったことのない自分に取って、筆記試験での高得点は狙えないものだ。
「苦手な者は多いだろう。だが安心しろ。この筆記試験は特別にパーティーで解いて貰って構わない」
そういえば試験のほとんどがパーティーを組んで行うって教えてくれていたな。
三人寄れば文殊の知恵と、この試験では人数が多い程有利になるはずだ。
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