第3章 闇を抱えていないヒロインっていないよね。

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第3章 闇を抱えていないヒロインっていないよね。

ミニゴブリンに襲われた俺を助けてくれた二人。シルヴィア・スウィーニーとルドルフ・サムソンは自分より四つも年下、十六歳の子どもだった。日本なら高校一年か二年生だ。 森の中を歩きながらシルヴィアとルドルフは来月中に王都のギルドに所属する予定だと話してくれた。ギルドの名前を聞けば当然【アナスタシア】の名前が出て来る。 お互いにそれぞれの才能があり、シルヴィアは水の魔法と回復魔法、ルドルフには戦士として剣の才能があるとのこと。 ミニゴブリンに背後から襲われた時に助けてくれた水の塊はシルヴィアの魔法だ。ゴブリンを簡単に窒息死させ、回復魔法は傷痕が残らない治癒力を見せた。あれだけ森の中を必死に走って疲労していたはずなのに、やや感じていた筋肉痛まで消えていた。森に入る前より元気になっている。 (誰もが納得する理想のヒロイン……もし俺が最強異世界転生で考える妄想ヒロインなら、まさにシルヴィアのような女の子だ……いや皆も考えるよね?) 顔良し。性格良し。ローブの隙間から見えたが大きい。何が?とは野暮なことは聞かないで欲しい。恥ずかしい妄想のことにもノータッチでお願いしゃっす。 本当なら異世界初の美少女に出会ったことに感激するんだが、喜べる状況では無い。 (理想のヒロインには、理想の主人公が隣に居るのは当たり前か……しかも幼馴染って) シルヴィアと張り合う様なイケメンの男。ルドルフが喜べない状況にしている要因だった。別に嫌いとか思っていないからね! 命を助けて貰ったのだから! ルドルフの剣の才能にも納得。ゴブリンを倒すことに苦とせず、仕事の作業のように倒していた。まるで序盤のレベ上げのように。これからRPGゲームの主人公のようにどんどん強くなるだろう。 キャンベル村では二人が将来有望のコンビだと言われていることを自慢するルドルフ。そんなことはないと謙遜するシルヴィアたちの会話に俺は表情に出さないが、内心は疲れ切っていた。 (うちのギルドに入られたら困るなぁ。俺のこと、絶対に馬鹿にするだろうなぁ。あーあ、これは決定したな。後輩に舐められる) そのうち「菓子パン買って来いよ」とか言われそう。シルヴィアとルドルフに踏まれる未来が少しだけ見えた気がする。しかも犬のように従っている自分の姿もチラリと見えた。
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