第1章 俺TUEEE系の主人公になりたかった。
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第1章 俺TUEEE系の主人公になりたかった。

「……寒っ」 布団を自分に掛けようと手で探るがどこにも見つからない。寝ている時にベッドから蹴飛ばしたかとも考えたが、部屋の中にしては寒過ぎることに気付く。 というか風を感じた。扇風機はまだ出していない。夏どころか春になったばかりだ。必要性がない。 「あん?」 いや待てと目を閉じながら考える。寝る前は何をしていた?と記憶を遡ろうとすると、頭がガンガンと痛いことから察する。 そうだ、居酒屋にお酒を飲みに行ったんだ。アレだけ酒を大量に飲んでいたから……もしかしてここは外なのでは!? 不味いと焦った俺はガバッと起き上がる。そこには朝日とも言える美しい太陽が煌めき……サンサンと……? 「…………………………………え?」 建物一つ無い大草原が広がっていた。 目の前には木も山も無い大草原。草しか生えていないのに全く笑えない状況だ。 空気が美味しいと感じたのは人生で初めてではないだろうか。それぐらい綺麗な草原だった。 歪んでいた視界が定まり、それは夢ではなく現実なのではないかと思い知らされる。 「いやいやいや、はぁあああああっ!?」 男の大絶叫が一帯に響き渡った。 唐突に訪れた急展開に脳の処理が追いつかない。必死に曖昧な記憶からどうしてこうなったのか思い出そうとしている。 考える可能性は三つ。一つ、皆の憧れ異世界転生! うん、まぁ、これはありえないので希望を捨てろ。 二つ目は夢。オラァ!と元気良く寝起きに一発自分の顔にグーをぶちかましたが痛いのでこれも違う。うーん、残念! 三つ目は酔った俺を誘拐して適当な場所に捨てたこと。手持ちを確認するとスマホと財布、両方を失っていた。可能性としてかなり高い。 少なくても自分の足で来たとは思えない。これだけ自然に囲まれた場所に来るまで町からかなりの距離を歩かなければいけないからだ。 「ヤバいヤバい! これ以上親に迷惑かけれるかよ……!」 二日酔いの状態でフラフラと立ち上がる。焦りながらも周囲を見渡し近くに何かないかと探す。 そして振り返るとそこには街があった。どうやらここは丘で、街の中を見下ろすことができるようだ。 だが安心感と同時に、嫌な違和感も感じ取っていた。 煙突のあるレンガの家々が並び、日本では珍しい造りの街並みだ。しかも巨大な外壁で街は円形で囲まれており、車や電車などは無く、たくさんの馬車が道を走り―――んんんんんん?