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第1章 遭逢
真っ白でなにもない天井と壁、先の見えない長い廊下、ぼんやりとそんな風景が目前に広がっていて、私はそこに座っていた。
ここはどこだろう。なぜこんなところにいるのだろう。私は何をしているのだろう。どれだけここにいたのだろう。
様々な思いが浮かぶが、答えを出せずに消えていく。
なぜか、心には漠然とした不安が渦巻いており、体が震えていた。
声の出し方がわからない。動こうとしても手足の感覚がなくうまく動かせない。
無理に動こうとして体制を崩し、前のめりに受け身をとることもなく倒れる。
痛みと床の冷たさが顔に突き刺さった。
ああ、なんだか…とても疲れた。
うつ伏せのまま目を閉じると床の冷たさと体が一つになっていく。
このまま、溶けてしまいたい。
床に頬をつけて数分後、遠のいていく意識の中、誰かの足音が頬を震わせた。
足音はゆっくりと私の方へ向かってきて、倒れている私の隣で止まった。
すると、体がゆっくりと浮き上がり、体の前面に温かみを感じた。
おんぶ…されてるのかな…?
足音の主が私を運んでいるようだ。
今、わかるのはその温もりが、とても懐かしく、とても悲しく、とても愛おしい温もりであるということだけだった。
わからないことだらけだけど、今はこの温もりに身を預けていよう。
体の震えはいつのまにか止まっていた。
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