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まあここで先に、今俺たちが捜査している事件概要について話しておくことにしよう。
夜十時ごろ、市内で、女性二人が死亡しているとの通報があった。
現場に向かい確認すると、市内に住むベトナム人女性が二名。アパートの一室で死亡していた。
一名は床にうつ伏せに倒れる形で、もう一名は壁に凭れ掛かり座るような姿勢。室内、両名とも血塗れのかなり凄惨な事件現場で、発見時点で手遅れは明らかな状態だった。
調べにより、被害者のうち一名は日本人男性と結婚して三年が経過しており、一般永住者として認められていて、もう一名の方も外国人登録証明書の簡易鑑定などにより、滞在に違法性はないと判明した。
現場となったのは被害者のうち日本人の妻の方が夫と共に暮らすアパート。
室内には争った形跡があり、また、周辺住民が夜七時頃、女性同士が争う声を聞いたという証言がとれている。
家庭向けの賃貸では無かったためか、隣人やアパートの他の住人は事件当時は仕事などで居なかったため、言い争いの具体的な内容はまだはっきりしていない。
事件を通報したのはその、事件時は不在だったアパートの隣人で、帰宅時、現場の部屋の玄関が開きっぱなしだったのを不審に思い声をかけようとしたところ、惨状を発見したとのことだった。
死因は刃物で刺されたことによる失血性ショック死。妻の方はほぼ即死とみられる。もう一人の女性の方は、しばらく生き延びていたが、出血多量状態から手当てされることなくそのまま死に至ったと思われる。
現場に血まみれの出刃包丁が転がっており、これが凶器とみられた。被害女性両名の血液、および指紋が確認されている。
被害者と婚姻関係にある男性は、現在行方不明。だが、周辺住民が争う声を聞いた時刻および妻の死亡推定時刻には勤務先に居たことが確認されている。
現場から近い位置の監視カメラ画像の収集、解析は進められており、この男性も一度は自宅付近に向かっただろうとは推察された。
……以上より、事件は女性同士の争いにより相討ちとなり、その後に帰宅した男性は深いショックのため手当ても通報も出来ず──もう一人の被害女性の方はこの際救助していれば生存の可能性はあったかもしれないが──そのまま、自失状態で放浪、その際に玄関を閉め忘れたため隣人が事件の発覚に至った、というのが、大筋の見方として立てられている。
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