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「……つまり今回君が聞いたのはベトナム語だったと」 「はい……多分」 まあ……そういう事になる、筈だろう。 正直に言うと分からないからベトナム語かどうかも分からないけど。 「いや……だって霊の声だろ? そこはこう、魂の通じ合いとかでさあ。都合よく君に分かるように聞こえたりするもんじゃないの?」 「……え、いや山南さんがここで都合よくとかそう言うこと言うんですか?」 さっきも言ったけど、この人は俺の話を聞いてくれはするけど、理系的思考の持ち主として超常現象そのものには否定的な立場だ。 そういう、ご都合主義的な展開を望むような発言をするとは思わなかった。けど。 「僕の考えに沿うなら、君の『能力』は君に都合よくあるべきなんだよ。あくまで君が考えてることだというのが僕の解釈だから」 ……ああ、そうだった。 繰り返しになるが、この人は俺の『霊の声が聞こえる』という事象を、そのまま信じるという形で受け入れてくれたわけでは無い。 根は優しくともこの人の根幹は科学の徒だ。そんなこの人が、俺の話を検証する上でどんな風に折り合いをつけているか。
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