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「別れちゃった」
そう言われたのは、あの日からたった二か月後だった。
「なにがいけなかったのかな。私、たぶん最初から好かれてなんかいなかったんだよね」
「そんな、こと」
どうして、彼氏はふってしまったのだろう。僕なら彼女を手放したりなんかしない。いつまでも笑顔でいてもらえるよう努力する。泣いている顔なんて、亜実には似合わない。
――僕なら、彼女を幸せにしてあげるのに。僕には、その資格はない。
この寂れた神社から一歩も出ることはできず、幸せになるのを祈り見守ることしかできない。こうして静かに一人で泣いている亜実に触れても、声をかけても、この気持ちを伝えることはできない。
それでもこの奇跡にすがっている僕は。
「もう僕は、神様だなんてたいそうなものなんかじゃないよ」
ひとしきり泣いて帰っていった彼女は、次の日には何もなかったかのようにいつも通りの表情を見せた。
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