呼子神

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 車が通れないような山に沿う狭い道から山の中へと伸びる獣道。その少し先の急な階段も登っていき、小さな石の鳥居に迎えられる。その奥にある社は高さが二メートルくらいで、横幅や奥行きからして恐らく社はなんとか一人入れるくらいの小さな神社。お参りのときに鳴らす鈴もない。 草木は荒れ放題で社もクモの巣が張られた状態。端の方に井戸が残っていて、たまっている雨水を使って掃除や手入れをすることはあるけれど、大してきれいにはならない。 もっと家から近いところに氏子も常駐している神社があるのだが、幼い頃からここで大小さまざまな願い事をしてから帰るのが日課になっていた。別にこれといった思い入れがあるわけではないのだが、気づいたときには当然のように通っていたのだ。これと言って叶えてほしいと思う願いがないことも多く、誰に話すまでもないくだらない話をしたり愚痴を吐き出したりする場所でもあった。  今日も、いつもと同じように手を合わせる。 「ゆうなからもらったキーホルダー、見つかりますように」 「小さなカバンの中だね」  幼い子供の声がして、呆然と顔を上げた。おかっぱ頭の男の子が屋根の上に座ってこちらを見下ろしていて、ばっちりと目が合う。足場のない社にどうやって登ったのか。それに、さっきまで誰一人としてこの場所にはいなかったはずだ。  固まってしまった私を見て、男の子のほうも硬直する。 「……え?」  間抜けな声を出した男の子を見て、ようやく我に返った。
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