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「公安が動いているらしいぞ」
別のパトカーで若い警官が同僚らしき警官と話している。
「公安? 公安警察か?」
「違う。調査庁の方だよ」
「え? 何で公安調査庁が? 連中は範囲外だろ。現場は関係ないだろ?」
「だからぁ、例のあれだよ」
「は? まさか・・・」
「そのまさかだよ。0(ゼロ)だ。ゼロが来ているらしいぜ」
公安調査庁ゼロ部隊。近年、公安調査庁が直属の実力行使できる部隊を編成したと噂される極秘部隊だ。機動隊やSATのような大部隊で無く、あくまでも隠密行動のみで動いているとされる少数精鋭部隊。といっても警察関係内部にも紹介はおろか、内容すら知らされていない。人数も正式名称も何も明かされていない。所属番号が無いから「ゼロ」と呼ばれている。
「じゃあ今あのビルで篭城している犯人は、公安が動くほどの重要な人間なのか?」
「それは分からない。カスかも知れないけどその背後が色々あるんだろ」
「ほう・・・。じゃあ俺たちゼロを初めて目撃できるかもな!」
「ああ、目を凝らして周りを伺っていろよ」
6車線の道路を挟んだ向かいの7階建てビルの屋上。
出入口にはスーツ姿の二人の男たちがドアの前に無言で立つ。
屋上の縁、パラペットと呼ばれる部分で肩膝を立ててライフルを構える長い髪の女がいた。
一見ただのOLだ。それはダークグレーのパンツスーツから誰もがそう思うだろう。異常なのはその女がライフルを構えているという点だ。
『メイヨウ、どう? いけそう? 人質の盾が邪魔でしょ』
女の耳に固定されたマイク付き小型無線から通信が入った。
「余裕よ、マーメイ」
『殺しちゃダメよ。動けなくするだけ』
「利き腕の肩の付け根を破壊する」
『まかせるわ』
「でも左手で拳銃が撃てるわね。やっぱ拳銃を狙うね」
『暴発しちゃうじゃない』
「銃身を撃つのよ」
『そんなこと出来るの?』
「いい角度で止まってくれればね・・・」
じっと動かずにスコープを覗きながら会話するメイヨウと呼ばれる女。
『今、許可が出たわ。チャンスが来たら撃っていいわよ、メイヨウ』
「了解・・・」
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