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雑居ビル最上階の5階フロアは物々しい空気が漂う。
ここは消費者金融のフロアのようだ。窓の前に社員らしき7人の男女が横に並ばされている。
「おいっ、お前のスーツを寄こせ!」
「え?」
窓に立つ社員の男一人に怒鳴る拳銃を持った男。フードの付いたネイビーブルーのパーカーとカーキ色のカーゴパンツ。無精ひげを除けばどこにでもいそうな40代の男だ。しかし血走ったその眼光からは何をしでかすか分からない狂気が滲み出ていた。
「早く脱げ! 俺の服と交換するんだ」
「え? 何で」
「お前が犯人役になるんだよ。分からねぇか?!」
「そんな・・・」
しぶしぶスーツを脱ぎ出す社員の男。
「早くしろ! それで警察からもう直ぐ電話が来るから、そうしたら警察に〝一刻も早く龍爪を壊滅しろ〟と要求するんだ」
「え?」
「だから、龍爪を壊滅しろって言うんだよ、バカ! 言ってみろ!」
他の社員は目を合わせないように下を向いて震えている。女性社員は涙を浮かべて目立たないように萎縮している。
「リューソーを壊滅しろ・・・」
おぞおぞと呟く社員の男。
「もっと気合入れて言え! 早く脱げよ! お前この銃で、」
と言った瞬間、
〝ガシャーン!〟
と窓ガラスが割れる音がしたと同時に男の拳銃が後ろにふっ飛んだ。
「ああっ?!」
驚いて倒れる男。社員達も反射的にしゃがみ込んだ。
慌てて拳銃を拾う男は、それを見てギョッとする。
「!」トカレフ54式だった拳銃の銃身は無くなり、何だか分からない鉄の塊になっていた。
「畜生!」と男が立ち上がった瞬間、
〝ガシャーン! ガシャーン!〟
と再びガラスが音を立てる。
「キャ~~~!!」
女子社員の悲鳴が飛び交う中、男の両肩から血が噴き出した。と、そのまま後ろに飛ばされる男。
「うぐ~うっ!」
立とうとするが立てない。
その瞬間を見計らって社員達が階段へ走り出した。
スーツを脱ぎ出した男もパンツ姿のままスーツを鷲掴みにすると、そのまま駆け出した。
「ちょっと待て! この野郎!」
叫ぶ男はまだ立てないで床でもがいている。
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