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車に乗り込む二人。男は上着を脱いだ。しわになるのが気になるようだ。
「メイヨウ、わらび餅食べる?」
「あ、食べる食べる」
と箱に入ったわらび餅を竹楊枝で摘み取る。
「小暮さんは?」
「俺はいいです。きな粉が落ちる・・・」
「あ~美味しい! やっぱ、きな粉と黒蜜が最高ね」
「でしょう? さっき扇屋の前で張り込んでいたから暇で買って来たんだ」
「さすがマーメイ、気が利くねっ」
むしゃむしゃとパクつく二人を見て
「あなた達はいつまで名前で呼び合うわけ?」
と小暮が言うと応えるメイヨウ。
「え? どうして? これはコードネームよ」
「私たちの本名はちゃんとあるのよ。だからいいじゃない」
マーメイも返した。
「だってそれは以前の名前でしょ?」
怪訝な顔をする小暮。
「でも癖が付いちゃっているから、丁度いいじゃない。間違えないし、本名じゃないし。私が長谷川美友、お姉ちゃんが星川麻美なんだし」
「どうして双子で未婚なのに名字が違うわけ?」
小暮はポカンとした表情で聞く。
「新たに0から個人で戸籍を貰ったの。ちゃんとお国からネ。好きな名字にしていいよっていうから、お互い好きな名字にしたの」
とメイヨウ。
「どうして長谷川なの?」
「別にいいじゃん。好きなんだもん」
「まぁいいけど、好きなら。マーメイは? どうして星川?」
「可愛いじゃない。〝スターリバー〟なんてロマンチックじゃない」
「あぁそうだね・・・」
何とも煮え切らない顔で二人を見る小暮。
「吉田さん、もう一つ食べる?」
運転手に聞くマーメイ。
「僕はもういいです」
「じゃあ私がもらう。これ大好き」
きな粉を唇に付けて笑うメイヨウ。
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