第1章 突然そんなこと言われても。

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大城寺 桜夜子(だいじょうじ さよこ) 26歳。 明日は私の27回目の誕生日。 現在とある居酒屋の一室にて高校の時からの友人達(3名)により開催された、前倒しの誕生日パーティー兼プレゼントである合コンの真っ最中。 目の前にある冷め切ってチーズの固まったピザ1切れを食べるか食べないか迷いながら、すっかり出来上がった酔っ払い7名を観察して、ため息を吐いた。 主催者である私の親友、果穂に至っては先程から周囲とまるで噛み合わない言動が炸裂している。 果穂・・・「今日は桜夜子のためのパーティーだから、私気を付けるね!」って豪語してなかったっけ?気を付けるって何を?公衆の面前での嘔吐?それとも酔っ払うたびに披露する十八番の腹踊りのこと? 大体、開始から1時間でこの有様。120分の飲み放題コースであるが故、残り1時間が苦痛で仕方ない。 だから内々でやろうって言ったのに! いつもの倍の数の酔っ払いを管理しなくてはいけないかと思うと、飲み過ぎてもいない胃腸がキリキリと痛み始めた。 そこに追い打ちをかけるかの如く、空席だった隣に開始からテンション最高潮だった1人の男性が着席した。 「お隣失礼しまぁ~す!!果穂ちゃんから聞いたけど、明日お誕生日なんだってぇ?」 胃痛プラス、頭痛が舞い込む。 「え えぇ・・・そうなんです・・・」 「友達のお誕生日をお祝いしてくれるなんて優しいよなぁ!!おめでと~!えーっと・・・」 「あ、大城寺です。」 フルネームを教えることを本能が拒否したため、苗字だけ伝えた。 と言うか、1時間前にフルネームを教えたはず。 「ダイジョージさん!!なんかすっっごいお金持ちそうな名前だよねぇ~!!」 「あ、はぁ、よく言われます。」 「俺もさぁ、苗字がすごいかしこまってるんだよ~。キョーゴクって言うの。下の名前はケンジってかなり普通なんだけどねー」 「素敵なお名前ですね。」 「ケンジってかなりありきたりだと思わない?!もっと捻って付けてくれても良いのにね~」 世界中の「ケンジさん」に謝るべきである。 「京極さん、確かお医者様でしたよね。専門はなんですか?」 「俺ね、外科医なの!今日もオペがあってね~。丁度これの生のやつかき分けて腫瘍摘出してきた訳よ~」 ピザ同様、冷め切って油の固まり始めたホルモンの炭火焼きを指して彼は言った。
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