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自身の誕生日祝いと言う名目の中、この先なんの特にもならない接待を私は敢行していた。
話題はいつの間にか彼の医者としての日常にシフトしていた。
自分が若いにも関わらず、如何に信頼され毎日多忙を極め、イケている男であるかを意気揚々と話し続けていたが、束の間彼は喋りを止めた。
流石に疲れたのか、自慢の引き出しがなくなったのか、いずれにしても少しは静かになった。ありがたい。
「あの・・・私お手洗」
「ねぇ、先生って呼んでよ・・・君のような可愛い女の子に呼ばれてみたい・・・」
これ幸いと思いトイレへ立とうとしていたとき、Dr.頭痛生ホルモン(即席であだ名を付けてやった)は、ひっそりと私にリクエストしてきた。
「え、あ、そ・・・そんなの毎日飽きるほど呼ばれているのでは」
「患者さんに若い女性なんて早々こないよ・・・ね、お願い、一回で良いからさ・・・」
何故だろう。たわいない事であるはずなのに、この犯罪的ないやらしさは。
新しいタイプの辱めであろうか。
要求に応えたら大切なものを失う気がして、喉の奥がつかえて声が出ない。
病を治すはずの職業に就く人間を隣に置いて数々のステータス異常が生産される状況に昨今感じてはいなかった大きなストレスが私の中にふつふつとせり上がってきた。
そして何故だか先生と呼ぶことを希望してきてから、京極の顔面が、彼の酒臭い吐息が頬を掠めるほどに接近してきている。
瞬間、苛立ちと指先の回路が繋がって目の前に転がる爪楊枝を掴んだ。
照準、Drの鼻腔(左)。
「桜夜子~一緒にトイレ行こー?」
鼻を押さえてのたうち回る男を想像していたところに、天使のようなミルキーボイスが降ってきた。
彩哉(あや)!!
助かった!!
「もちろん!!丁度膀胱が爆発しそうだったの!!」
私のストレスも!!
勢い良く立ち上がって振り返り敵の寝所に討ち入りする武士の如く引き戸をスパーン!!と開いた。
厠へいざ参ろうぞ!!
居酒屋で用意されているスリッパに勢いよく両足を突っ込んでいたら耳元でドスの効いた低い声が耳元に囁く。
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