序章

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「全艦、攻撃目標を最後尾の艦に! あれこそビスマルクよ!」  本当のビスマルクを発見したウェールズは全艦に号令を掛ける。 「あら、バレた? 流石はキングジョージⅤと言うだけはあるわね」 「人違いで残念ね、私はプリンス・オブ・ウェールズよ」 「まあどうだっていいんじゃない? ビスマルク、折角ここまで時間を稼いであげたんだから、ちゃんと実力を見せてちょうだい」  ウェールズの訂正は無視して、アドミラル・ヒッパー級重巡洋艦プリンツ・オイゲンはビスマルク級戦艦ビスマルクに呼び掛けた。 「感謝する。この戦い、避けられそうにないね……Jot Dora(ジョットドーラ)!」  ビスマルクはドイツ語の掛け声と共に、ウェールズとフッドに砲撃した。  砲撃と共に海面に水柱が立つ。 「きゃあ!」 「フッド!」  ウェールズは砲撃を辛くも避けたが、フッドは避け切れずに直撃した。 「この力……! やっぱり、貴女達は『あの力』を……!」 「勘付いたのか……オイゲン、この海域から離脱する」 「え~、戦局は有利なのに、どうして?」  撤退を宣言したビスマルクにオイゲンは疑問符を浮かべる。 「秘密兵器がバレた以上、このままでは不利になる。命令に従って撤退しなさい!」 「あら、じゃあしょうがないわ。子猫ちゃん達、また今度ね」  オイゲンはそう言い残し、ウェールズ達から背を向けた。  その後ろ姿にフッドは問う。 「……どうして……どうしてあの盟約を……アズールレーンから離脱したのですか……!?」 「『忠誠こそが我が名誉』──力ある者だけが人類を救えるのよ。私達は……ただ違う道を選んだだけ」 「…………」 「貴女達に理解されると思わないわ。私達の行動の是非は全て未来に託すよ。……宿敵よ、ヴァルハラでまた会おう……」  それだけ言うと、ビスマルクはもう言う事は無いとばかりに立ち去って行った。    ◇  ◇  ◇  二時間後、ロイヤル母港。  ──コンコン。  執務室のドアが2回ノックされる。 「入れ」 「失礼します」  机の書類に目を落としていた指揮官が許可すると、秘書艦のJクラス駆逐艦ジャベリンが入ってきた。 「戦果報告をいたします。アイスランド近海を航行していたケント級サフォーク、ノーフォーク級ノーフォーク、キングジョージⅤ級プリンス・オブ・ウェールズ、アドミラル級フッドの艦隊が旗艦ビスマルクの鉄血艦隊と交戦、これを退けました」
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