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朝の4時、ぼくは目を覚ました。覚めてしまったというべきだろう。窓の外はまだ暗く、ガラス戸を通して寒気が伝わってくる。  そのままベッドに潜り込んだまま、時が経つのを待とうとした。テレビをつけ、ニュースをしばらく見る。画面の隅に時刻が表示されている。分の数字が4から5へと一つ増える。じいっと見ていると、長い時間だ。起き出さなくてはならない時刻までの限られた時間が、その分確実減った。  時間をムダにしてはいけない。  そっと階段を降り、サンダルをつっかけ、音をたてないようにして玄関のドアを開けて、外に出た。  もうすぐ四月とはいえ、未明の空気は冷える。上を羽織ってくるのだった。足早に2ブロック離れたところにある一番近いコンビニに向かう。  店には他に客は誰もいなかった。店員の姿も見えない。  ぼくは迷わず店の奥の棚に向かう。  素早くいくつも並んだ似たようなデザインのチューハイ缶のアルコールの度数を一瞥する。5%、6%、7%と少しづつ違う。  7%のを2本抱え、レジに向かう。  黙って無人のレジの前に立っていると、すぐ無言で店員がとんできた。いつもながら、どうやって知ったのだろう。  機械的にレジが打たれる。     
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