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 そうなると黄疸が出たり、手のひらが赤くなったり(手掌紅斑)、胸の皮膚に毛細血管が蜘蛛の足のように浮き上がってくるクモ状血管腫、男でも乳房が大きくなってくる女性様乳房、腹水、アンモニアなどの老廃物が肝臓で分解されなくなって毒素が頭に回ってくる肝性脳症など、よくもまあというくらいロクでもない症状が並ぶ。  幸い、どれもまだ自分には当てはまらない。  アルコール性肝硬変はたとえどんなに重篤でも移植はしてもらえないという説があるが、本当だろうか。すぐ飲んでしまうからムダという判断もあるだろうし、たいてい収入もないまま飲み続けているから、手術費用など捻出できるわけもない。アルコール性ではないが、政治家の河野一郎がやはり政治家の息子の河野太郎から生体肝移植を受けた時の費用が二人合わせて2000万円とかいっていた。どこまで正確な数字か知らないが、政治家でもなければ出せない金額だ。もちろんそんな鐘など、逆さにして振ってもこっちに出てくるわけもない。  飲み過ぎると、悪くなるのは肝臓だけではない。膵臓がアルコールで痛むと、膵臓が分泌する消化液で膵臓自身が消化されてしまう。劇画原作者の梶原一騎が五十歳で死んだ直接の死因は心臓発作だったが、その前に倒れたのは「激症壊死性膵臓炎」だったはずだ。医者が手術のために開腹したらほとんど膵臓は溶けたも同然の状態だったという。致死率が100%に近く、癌の方がまだ見込みがあるとすら言われた病からいったん回復する体力がありながら、結局長続きはしなかった。     
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