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高校も行きたかった高校ではない。大学も行きたかった大学ではない。だからといって、他に本気で行きたかったところがあったわけでもない。それでも登校拒否をするわけでもなく中退もせず落第もせず、しかしおよそぱっとしない成績だが見かけは大過なくとにかく卒業だけはした。
面接には落ち続けた。いくらあらかじめもっともらしい答えを想定していても、面接官は意地悪くその隙を突いてきた。どこがどう悪いというより、必ずなぜうちの会社を希望したのか聞かれ、そんなことわかるか、と思い続けたのが、顔に出たのだろう。
いくつ面接を受けても落ちた。何十社受けたか、覚えていない。業種も職種もまちまちだった。そのうち、自分はこの社会で必要のない存在だと思えてきた、というより前からそうだと思っていたのが確認できた。
受け続けているうちに一つ、ほとんど面接らしい面接もしないで受かった会社があった。商品取引の会社だった。実のところ、商品取引とはどんなものなのか、全然知らないで受けたのだ。商社の一種かと思っていたくらいだ。
研修はハードだった。同じグループの会社を合わせてとはいえ、100人近くが合同で合宿したのには驚いた。今どき、なんでそんな大勢雇うのか不思議だったが、後でそのわけはわかった。
とにかく、毎日6時起床の筈が、研修生の誰かが“やる気”を見せるために5時半起きすると、すぐそれが全体の基準になって毎日5時半起きになってしまう。
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